川崎宿の旅籠の娘・おちかは、とある事情から江戸で袋物屋「三島屋」を営む叔父夫妻の元へ行儀見習いとして身を寄せている。叔父の伊兵衛は、実家に帰れないおちかに花嫁修業をさせて嫁に出すつもりでいたが、おちかは女中として忙しく働くことで自らの過去を頭の隅へと追いやろうとしていた。
ある日、伊兵衛が急な所用のため、訪問が予定されていた客への対応をおちかに任せて外出してしまう。他人に心を閉ざしているおちかは不安に駆られるが、自分を信用してくれた叔父のためにも、客に非禮があってはならないと覚悟を決める。客は、庭に咲く曼珠沙華に恐れおののくが、おちかに対して自分の過去にまつわる怪をぽつり、ぽつりと話し始める。帰宅後、おちかから事の顛末を聞いた伊兵衛は、江戸中から不思議な話を集めるとして、おちかにその聞き役を務めるよう言い渡す。
最初の客・藤吉と二人目の客・おたかの不思議な話の聞き役を務めたおちかは、次におちか自らが三人目として、おしまを聞き手に悲しい過去を話し始めるのだった。
やがて、一度に語り手は一人だけが黒白の間(こくびゃくのま)に招かれ、聞き手はおちか一人だけの「変わり百物語」は三島屋の看板となる。
おちかが19歳の時、富次郎が三島屋に帰って來て、ともに聞き手を務めたりしていたが、おちかが勘一の元に嫁いでからは、富次郎が聞き手を引き継ぐ。
=====20240120=====
宮部美幸小說漫改。